出口のないお花畑に迷い込んで

あなたがそこにいてくれるから

魔法がとけました

 

 

ある日、なんの前触れもなく、なんのきっかけもなく、なんの理由もなく、ほんとうに突然気になりはじめて。

そのまま、あっというまに夢中になって心奪われて。

あまりに突然すぎたそれを、「魔法にかけられた」ようだと形容し、いつか魔法がとける日が来るのかね、なんて他人事のように言っていたわけだけど。

 

 

その日、もほんとうに突然やってきました。

 

なにか嫌なことがあったわけでも、されたわけでも、幻滅したわけでも、呆れたわけでも、嫌いになったわけでも、好きじゃなくなったわけでもなくて。

ただ、たしかに、そこに今まであったはずのなにかがなくなってしまった。

はじめはなにがなんだかわからなかったし、長く好きでいるとたまに訪れることのある「ちょっと心が離れてる時期」なんだと思ってた。

彼に必要以上に向けられる敵意や悪意、容赦なく投げ掛けられる心ない言葉にうんざりして、まるごと目を背けることもあったけど、誰がなんと言おうと、どう思おうと、わたしは彼が好きだったし、わたしの知っている彼が彼であればそれで良かった。

でもいつしか、現場に行くたびに「目の前にしてもなにも感じなかったらどうしよう」「楽しめなかったらどうしよう」って不安に感じるようになり(今思えばもうこの時点でおかしい。どうしようもなにもどうもしない)、行ってみたらもちろん楽しいし好きだなぁって思えて、「はあ、良かった」って安心するようになった(今思えばこれもおかしい)。

 

今まで当たり前だったことが当たり前じゃなくなることは、とてもこわいことだった。

 

お友達とお酒を呑みながらいろいろ話しているなかで、自分の口から溢れた「なんでだろう。魔法がとけちゃったのかね」っていう言葉にはっとした。話を聞いてくれていたお友達もはっとしていた。

 

そう、ついに、

魔法がとけてしまったのだ。

 

頭沸いちゃってるみたいな表現だけど、それしかこの現象を説明できる言葉がなくて。

ある日突然瞬間的にとけたのかもしれないし、気付かないうちに、伸びた爪を切るごとに、溢れた涙を拭うごとに、少しずつ抜け落ちていったのかもしれないし、それは自分でもわからないけど。

 

 

 

それを自覚してから、やっぱりちゃんとけじめつけなきゃなって思って、自分の気持ちを確かめるためにも、文字にしようって決めて。

でも、文字にしようとすると、どうしても涙が溢れてきて。

なんだ、まだ好きなんじゃん。じゃあ、こんなもの書かなくて良いじゃんって、書いては消して書いては消してを繰り返して。

そんなことをしてるうちに、ずるずると今日まで来てしまったのだけど。

 

でもね、気付いちゃったんだ。

涙が溢れるのは、わたしが今も彼を特別だと思っているからじゃないんだってこと。

今のわたしの彼への気持ちがそうさせているわけじゃなくて、あの頃のわたしの彼への気持ちだったり記憶だったり思い出だったりが、そうさせているだけなんだってこと。

 

 

 

人それぞれ、自分なりの「担当」の定義を持っているのだと思うけれど、わたしにとってもそれはあって。「ただの好き」と「担当」のあいだには、明確なボーダーラインがあって。

そこから外れちゃったことに気付いてしまった。

あの、全身の細胞が沸き立つような、独特なあの感覚は、もう、どこにもなかった。

 

 

 

好きになれたこと、1ミリも後悔してない。一度だって後悔したことなんてない。

 

好きになってから、はじめて目にしたときのこと、まだ覚えてる。ほんとうに存在してるんだなぁって思ったんだ。

はじめて踊って歌ってパフォーマンスしているところを観たとき、この人のために生きていきたいって、大袈裟に聞こえるかもしれないけどほんとうにそう思った。

 

時には真ん中に、時には全体が見渡せる端っこに立って、みんなをまとめていた小さくて頼りがいのある姿、孤独に戦っていた姿、なんでもできる人なんかじゃないのに隙を見せないようにしていたところ、それでいてどこか抜けているところ、ぜんぶ覚えてる。

闇を抱えているように見えたときのこと、まんまるで漆黒な瞳に飲み込まれそうになったときのこと、甘い香り、ちったいおてて、あの夏のことは忘れないよ。

 

たまにしか語ってくれなかった未来のこと、過去のこと、自分のこと。ほんとうに楽しそうに、しあわせそうに笑ってくれたあの日のこと。いつか本物降らせるって言ってくれたこと。ずっとそう思ってもらえるように、その場所にいたいと思ってもらえるように、できることをしようって決めたんだ。

 

震える息遣い。抱き合って喜ぶ姿。悔しくても悔しいって言えなかったこと。代弁するように思い切り泣いてくれた、全身で悔しがってくれた幼い仲間がいたこと。彼が教えたことをどんどん吸収して成長してくれる仲間がいたこと。

隣に並ぶ仲間ができたこと。オリジナル衣装を作ってもらえたこと。お名前がついた日のこと。仲間が増えたこと。強みだと、武器だと言ってくれたこと。少しずつ、少しずつ、未来について語ってくれることが増えたこと。どれもすべて嬉しかったなぁ。

 

はじめて弱みを見せてくれた日のこと。あまりに衝撃的で。あんなにもっと弱いところ見せてくれたら良いのにって思ってたのに、いざとなったら狼狽してなにもできなくて。でも自分にできることをできる限りにしようと決めた。

それが報われた気がしたときのこと。まったく関係なんてないかもしれないけど、ほんのちょっとだけでも力になれたんじゃないかと思えて涙が出るくらい嬉しかった。

 

自分のためより、人のために頑張れる人だから、仲間ができて、すごくすごく強くなったね。ちっとも強くなんかないのに、弱みを見せずに強がっていたあの頃とは違って、弱みを見せられる強さを身に付けたね。

 

 

 

まんまるで漆黒な瞳も、ぽろぽろ溢しちゃうちいさなおくちも、ちったいおてても、顎のラインも、首筋も、鎖骨も、ほくろも、背中も、ぜんぶだいすきだった。

指先まで、足の爪先まで意識したしなやかで繊細なダンスも、視線も、表情も、年々上手くなっていった歌も、発声が良くなっていった声も、上ずった声も、喋り方も、仕草も、ぜんぶぜんぶだいすきだった。

お箸の持ち方が下手なところ、たまにお行儀が悪いところ、直したほうが良いよって思うところもあったけど、それも含めて愛しかった。

 

 

 

好きになれて、しあわせでした。

もちろん楽しいことばかりじゃなかったし、苦しいこともつらいことも嫌なことも泣きまくったこともあったけど、それ以上にしあわせだった。

たくさんのことを教えてくれた。いろんな感情を教えてくれた。わたしにできることを教えてくれた。夢を見させてくれた。一緒に夢を見て、一緒に叶えて。たくさんの人に出会わせてくれた。

ありがとう。

今まで、ありがとう。

だいすきだったよ。

 

これからも大切な人なことに変わりはないし、本物を降らせてくれるところも見たいし、まだまだ新しい誰も見たことのない世界を一緒に見たいし、目標の地に立っているところも見たいから、これからも現場に足は運びます。

だからこれといってなにが変わるわけでもないと思うのだけど。

ただ、この数年連れ添ったこの肩書きとは、今日ここでお別れ。

「担当」は卒業します。

 

そんなわけで、今日は手持ちのなかで某シーンが一番近くで観られるお席だったので、今日心のなかで「卒業式」をしてきました。

朝目が覚めて時間を確認したときに誕生日だったのは、さすがにできすぎててドラマでもこんなことないよなって思ったけど(笑)

まさかの今日に限って真ん中で前髪を分けていらっしゃって、最後までそれはあんまり得意じゃないままだったなぁ(笑)

 

 

 

今までほんとうにありがとう。

いつかありがとうって言えたらいいな。

あなたが思い描いた未来に立っているあなたに向かって、おめでとう、ありがとうって言えたらいいな。

これからも、たくさんの人を笑顔にして、たくさんの人をしあわせにして、たくさんの愛を奏でていってください。

そしてなにより、あなたがずっとしあわせでいてください。

 

このままずっとありがとうって言い続けちゃいそうだから、このへんでおしまいにします。

全然まとまらなかったなぁ(笑)

 

 

 

明日も明後日も10年後も笑ってくれていますように!

ありがとうございました!